その小屋はサトウキビ畑の中に取り残されたようにたたずんでいた。一見すると農機具をしまっておく小さな小屋のようだが、よく見ると周囲には崩れた石垣と沖縄の民家に特徴的な「ひんぷん」と呼ばれる壁が残されていた。 小屋の中には香炉が三つ、先祖の名前が列記された位牌がほこりをかぶっていた。
小屋は一家全滅の屋敷跡に建てられた鎮魂の碑なのである。このような小屋が点在するのは沖縄県糸満市、米須地区では全257戸のうち一家全滅が62戸(24%)、住民のうち約半数が死亡したとされる。 観光客で賑わう沖縄だが、少し違った角度からみると、至る所に戦争のはらわたがぽっかりと口を開けている。
